ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas、以下BMC)の事はご存知だろうか?

ビジネスモデルを考える時には、
そのビジネスがどの様な活動や要因によって、どの様な価値を創造しているか、
それがいかに顧客に届けられていて、それによってどの様な方とどの様な関係性を生んでいるのか、
また、それらの各要素を関連付けながら考える必要がある。

BMCは、この様な要素を9つに分け、
有機的につながりを視覚的に理解することができるツールになっていて、
1つの要素に変化を与えると、他の8つの要素も変化することが理解できるようになっている。
スライド1

詳細は、アレックス・オスターワルダー (著), イヴ・ピニュール (著)
『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』を参考にされたい。

このBMCを活用することで、
既存ビジネスを分析するだけでなく、
競合との差別化や、新規事業の創出等を創発する際にも、
関係者間の「構造化・可視化された共通言語」を持てることが期待できる。

所が、良くある話として、
「BMCを書いてみた・・・で、何なの?」
「付箋を埋めるのは楽かった。で、この後どうするの?」
「新しいアイデアを付箋に書いて発散させてみた。さて、どうやって絞り込んで収束するの?」
等々の声が聞かれる。

どうやら、残念な事に、
「BMC自体の価値提案」が何なのか?
ココが上手く伝わっていないケースが多いという課題が有るようだ。
課題解決には、まず前提条件の整理が必要だろう。

以下、私なりの解釈だが、ご参考になれば幸いだ。

 

まずは、以下のどちらなのかを、
しっかり区別しておく必要性があると考えている。
①既存事業の分析や改善
②新規事業の創出

なぜなら、①の場合は、具体的な事例を積んで、抽象化していく作業が中心になるが、
一方、②の場合は、抽象的なアイデアを具体化して行く作業が中心となり、思考の方向性が逆になる事が多いからだ。

そして、いずれの場合も、
9つの領域を個別に「埋めただけ」ではなくて、
特に隣り合うマス同士が、しっかり関連性をもった要素になっていないと、
本来BMCから得られるものが大きく損なわれる。

次のステップに繋がる、新しい行動を促すようなBMCができあがるかどうかは、
上記の視点を踏まえた上で更に、
「面白いBMCになっているかどうか」が重要と考えている。

私は、この「面白さ」が現れる可能性が最も高いのは、
9つのマスのど真ん中「価値提案」の箇所だと思っているし、
そうあるべきだとすら感じている。

このマスが、その事業のUSP(Unique Selling Proposition)を端的に示していて、
左側がその根拠、右側がその伝達方法になっていると、
BMCに命が宿ってくる筈だ。

そしてもう1点注目したいマスが「顧客との関係」だ。
どこかとらえどころのないマスだと感じている方も多いようだが、
BMCにUSPが示されていると、
多くのケースにおいて、このマスが、
他にはない特別な物になってくる気がしている。

また、アイデアを取捨選択する場合、どのマスについても(目的にもよるが)
多くの場合で、
「当たり前の事」は省いてしまったほうが良いだろう。

さて、だいぶ前置きが長くなってしまい恐縮だが、
以上を踏まえて、タイトルの「BMCをお金に変える」という事について触れてみたい。

経験上、命の宿ったBMCからは、簡単にセールスレターを生み出せる。
セールスレターの役割は、あなた事業を応援してくれる人に、その価値を適切に伝え、何らかの行動を取ってもらう事。
つまり、セールスレターの良し悪しが、その感謝の気持ちが形になった「お金」に直結する訳だ。

更に、逆も然りで、優れたセールスレターからは、
面白いBMCが描き出されやすい。これを行うと、セールスレターに事業の特徴がうまく盛込ているかどうか、俯瞰しやすい。

BMCにもセールスレターにも共通するのが、
「USPが端的に示されているかどうか」
というポイント。

分析〜改善のツールとしても、
事業創出のツールとしても、
「どうして多くの競合の中から、わざわざアナタの会社を選ばなければいけないのか?」
という質問の答えがど真ん中に描かれていて、
それに関連付けてマスを埋めていくと、
セールスレター等の即効性のある武器が出来上がる、
つまり、BMCからお金が湧き出てくるという訳だ。

逆に、セールスレターを書いてから、
それをBMCに落としこむことで、構造的かつ客観的に、
関連付けに無理がないかどうかなどのチェックが容易に行える。


さてここで、優れたセールスレターの例として、
神田昌典(著) 『稼ぐ言葉の法則』に掲載されている、
リンゴ農家を題材に、
私なりにBMCを書いてみたのでご参考にご覧頂きたい。

一般に想像されるリンゴ農家のBMCとは大きく異なっている事に、
同意して頂ける方が多いのではないだろうか?

スライド2
※上記BMCは、一部、当方の想像による書き足しを含んでおります。

BMCをセールスレターへ落とし込んだり、
セールスレターをBMCへ展開した。
この様に複数のツールをインタラクティブに使用する事で、
アイデアが現実的な力を持ち始める
つまりお金を産む十分なキッカケが作れる筈なので、
是非試してみて頂きたい。

レターの書き方については、また別の機会に私の取り組みを紹介してみたいと思っている。

 

さて我慢してここまでお付き合い頂いたお礼も兼ねて、最後に、一番大事だと思っている事を、書いておきたい。

BMCを行動に結びつける例としてセールスレターを取り上げたが、他のマーケティング戦略や、アライアンス戦略だったとしても、「次の行動」に具体的に結びつかないと書いても意味が無い。当然お金にもならない。

「書いたら何か見えてくるんじゃないか?」という淡い期待は、裏切られる事が殆ど。つまり、一番大切なのは「なんの為に書くのか」という目的意識をはっきりと持ってから始める事に尽きる。
☆行動のヒント

・イノベーションのタネは掛け算から生まれる
・当たり前の事なら、もはや削ぎ落とした方が本質が見えやすい
・「何のために」という目的意識はあらゆる場面で重要

最後までお読みい頂きありがとうございました。

宮木俊明

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