2017年6月11日(日)10時~18時

渋谷駅新南口目の前のイベントスペース「光塾」にて
最先端のイノベーションメソッドを用いて
「アジアの保育」を題材に
貴重な第一線の実践者と一緒に
価値創造による社会変革のプロセスを体験する事を目指した
一日ワークショップを開催した。

総勢12名を2グループに分け、デザイン思考をベースに、
ビジネスモデルキャンバスやバリュープロポジションキャンバス、
普段行っている新しい読書会の手法や
業務経験を踏まえたオリジナルメソッドを交え
参加者の皆様のご協力のもと、何とかご好評のうちに終えることができた。

午前の部

まずは全体の流れを含めたイントロダクションと、
ベトナムの保育園で試行錯誤をされてきた松井麻里子さんから、
ミニベトナムセミナーとして話題をご提供頂いた。

かつての日本の高度成長期の様に、
物質的には豊かでなくとも、
若年層が非常に多いエネルギーにあふれた国。

一方、温和なイメージのある東南アジアの国、
ベトナムだが、子育てには厳しい所もあり、
嫌がるものでも無理やり食べさせたり、
時に体罰も容認されるような側面もあるとの事。
そういった負の側面も含め、
「かつての日本」に近い印象を持った。

そんなベトナムでは「日本式保育」を
うまく取り入れようという動きがあるという。
ベトナムの方々が日本の子供たちをみると、
体罰等の過剰な手法を用いていないのに
「どうしてあんなに行儀がよく躾がうまくされているのだろう」
となり、自然と良いものはぜひ取り入れていこうという所に行きつくようだ。

この中で、社会風土の違いやコミュニケーションのギャップなどが
課題として浮かんできそうなところが想像された。

情報をご提供いただいたのちに続いて、
「ビジネスモデルキャンバス」のワークショップをスタート。
概要をお伝えし、キャンバスを活用しての自己紹介などの実践のなかで要点を押さえて頂き
9月からベトナムの保育園へ先生方の指導や
カリキュラム作成などの役割で赴任される際の
松井さんのキャンバスを全体で共有し、
お昼休憩へと進んだ。

一枚のキャンバスがあるだけで初対面の方でも色々と話が弾んだり、
意見を交わし合うことも容易になる事を感じ取って頂けただろうか。

午後の部

続いて、課題をより明確にしていくために、
「インタビューと観察」を実施。
共感の重要性、固定観念を外すこと、
答えを出そうとしない、答えが出たと思わない、
そんなコツをお伝えしつつ、参加者を代表して
3名の方にインタビューに挑戦していただいた。

苦戦されている方もいらっしゃいましたが、
それも当然の事。
「本音を聞き出すのはそう簡単ではない」
「うまく言語化できない悩みや問題もたくさんある」
そんな経験を共有させていただけていたら幸いだ。

インタビューの様子を観察したその結果を続いてグループ毎に
「バリュープロポジションキャンバス」の右側半分に落とし込んでいく。
どんな仕事をしていて、そこからどんな痛みが生じているのか。
またはどんな仕事をしていて、どんな利益を得ているのか。
同じ量の情報を与えられても、人によって見ているポイントが異なるという事が、
体感していただけたのではないかと思う。

続いて、観察結果をマッピングしつつ見えてきた課題を
「How might we…」「我々はどうすれば○○できるか」
という短い文章に収束。

課題をまず設定してから解決のためのアイデアだしへと進んでいく事。
逆にここまでのプロセスでは
「課題を解決しようとしない、アイデアを出さない」
という事が重要となる。

出来上がったお題に対してアイデアを出しまくり、
グループ間で課題を交換したり、
読書会スタイルで本からアイデアを得る手法も実践。
「新しい本の読み方が体験できた」とご好評をいただいた。


各チーム50を優に越えるアイデアを出したのちに、
それを取捨選択〜統合化をしつつ徐々に収束させ、
「プロトタイプ」の原型までを共有。

アイデアは心理的・物理的両面の「制約条件」さえ外せば沢山出てくる。
一見突飛なアイデアでも、それを磨いたり、
他のアイデアと融合させたりすることで想定外のアイデアが出現する。
そして、グループで出しまくって付け足したり広げたりするプロセスにより
「誰のアイデアか?という属人性をなくす」という効果が得られる事も重要なんだと、
感じて頂けていたら幸いだ。

まとめ

いよいよ最終行程へ。
プロトタイプをバリュープロポジションキャンバス左側へと反映さて、
しっかり顧客の痛みを消したり、利益を増幅させるアイデアになっているかを確認。
続いてそれを「ビジネスモデルキャンバス」へと反映させ、
アイデアの実現や持続性という観点から全体を俯瞰し、
グループ毎に発表をしていただいた。

「単発のイベントになってしまっており、持続的可能なビジネスという観点まで行き届かなかった」
「真の課題解決の難しさがわかった」

それぞれの立場から、課題解決の難しさも感じて頂きながら、
最後に参加者それぞれの振り返りを共有させて頂き、
無事にワークショップも終了。

「1日で課題をだして、アイディアをだして、絞ってビジネスモデルとして考える、ということでかなり後半疲れましたが、すごい充実感がありました」
「大量のインプットでまだ頭が整理できていないですがとても面白かった」
「一通り流れが体験できて有意義でした!」
等々、主催者冥利につきるありがたいコメントも頂けました。

終了後は、懇親会で一日の疲れを労い、様々な情報交換に盛り上がりました。

今回は以下の3団体よりご助力を頂き共催にて開催をさせて頂いた。
末筆ながら厚く御礼申し上げたい。

NPO法人市民科学研究室
ビジネスモデルイノベーション協会ヘルスケア分科会
まちレボ

また参加費の一部を「子供の未来応援基金」に寄付させて頂いた。
保育士、看護師、技術者、大学教員、学生、会社員、個人事業者etc…
多様なバックグラウンドをお持ちの皆様の積極的なご参加に心から感謝したい。

☆☆ ご参加頂いた皆様の声 ☆☆

【参加目的】
・自分の仕事のヒントを得たい。ベトナムの保育についても知りたい!
・大勢での学びを深め、次のアクションへのエンジンをかけたい
・デザイン思考を体感し一通り説明できるようになり、仕事に活かしたい
・ベトナムの保育事情に興味があったのと、ワークショップを体験し、手法や進行方法を学ぶことで、今後の学習や将来の活動に活かしたい
・ビジネスモデルキャンバスを書けるようになりたい。ベトナムの保育について、周りの人より詳しくなりたい
・自身の専門分野でビジネスモデルキャンバスや「保育」という視点も活用したい
・何も考えすに来てしまいました(笑)が、今後の仕事のヒントを得られるように取組みます!
・デザイン思考について興味があった。人に話せるように、あわよくば組織内で使えるようになりたい!
・イノベーションやアクティブラーニングのタネを探しに来ました!

【参加後の振り返り】
・他の方の考えを理解できるようしっかり聞くことを心がけて過ごしました。ワークショップを一通り体験し、ベトナムの保育事情についても知ることができた。新しい本の読み方や、ビジネスモデルキャンバスなど今回得られたものを活用していけそうです!
・失礼だとは思いながらもそれを押し殺して真剣に話をしました。別な無の保育の厳しい状況をしると同時に、そこに向かっていく熱意を感じることができました。自分の経験と知識とで役立つことがあれば、おせっかいでもこれからも協力を申し出たいと思っています!
・わからないことは質問し、積極的に発言をしようと心がけました。ベトナムの保育事情を題材に、デザイン思考の流れと、ビジネスモデルキャンバス、バリュープロポジションキャンバスを体感することができました。今日知った本を読んで見ると同時に、学んだツールを仕事や自己分析に使用します!
・客観的に今の現状を提示していくことを意識しました。具体的な沢山のアイデアが出て驚きました。今日の皆さんとこれからもつながって頂きたいと思いました!
・普段とは切り口を変えて、見て、考えてみました。本当の根っこの部分はなかなか表には表れない。けれどそんな「たったひとり」を救おうとする事で社会が代わって行くのかも?と思えた。まずは自分の課題でビジネスモデルキャンバスを書いてみます!
・自分の意見をしっかり伝え、他の人の意見をしっかり受け止める事に取組みました。課題、悩み、本音といったものを「伝えないと」アイデアは生まれないという事を実感できた。今週の授業で今日学んだ内容の一部を取り入れて見ます!
・デザイン思考、ビジネスモデルキャンバス、バリュープロポジションキャンバス、読書会と一連の流れの中で体験しました。ワークショップの進行方法と、集合知による新しい発見が得られました。まずはビジネスモデルキャンバスを書いてみます!
・色々な考え聴くこと、特に突拍子も無い事でも受け入れることを心がけました。まだ十分に理解できていない所が有るため、本を見返して落とし込んでみようと思います!

★行動のヒント
・たったひとり「誰を幸せにしたいのか?」目的を明確に
・多様な視点、発散が得意な人や、収束が得意な人とをバランスよく組み合わせる為のDiversity
・思いついたら、まずは誰かに声をかけてみよう!

最後までお読み頂きありがとうございました。

宮木俊明

 ※共創型ワークショップについては、
記事「科学的方法だけではラチがあかない」もご参照ください

※ソーシャルイノベーションの取り組みについては
記事「ソーシャルイノベーションの要素」もご参照ください

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