あらゆる行動がイノベーションに繋がるわけでは無いが、

行動を開始しないとイノベーションは始まらない。
Wikipediaなどによると、イノベーションは
「新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、
社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。」
とされている。
イノベーションが変革に繋がる行動なのだとすると、
それを始めれば当然、既存の組織ネットワーク、
産業のバランス等に不均衡を起こすことになる為、
既得権益を守る力が働く。
これは、イノベーションの主体者にとっては逆風でしかない。
イノベーションには、それを乗り越えながら、
これまでとは違うアイデアに基づき
日常とは違う行動を起こしつつ、
新しい何かが生まれる為に必要な環境や行動が必要となるのだろう。
今回は、先日ゼロワンブースターという会社のセミナーに参加し、
そこで得た情報から考えたことをまとめてお伝えしたい。

【日本と欧米との環境差】
イノベーションの担い手として有望なベンチャー企業(スタートアップ)への
投資金額がケタ違いで有ることはよく知られているが、
違いはそれだけではない。
イノベーションに繋がる行動を起こしやすい環境の醸成に向けた
「イノベーター同士の出会い・ネットワーキング」を重要視する姿勢にも違いが有る。
起業家や投資家が集まるようなセミナーの「形式」一つを取ってみても、
大学の講義のようなスタイルで進行し、
すべてのプログラムが終了してから懇親会に移るような
日本型に対して、欧米ではいきなり飲食物が振る舞われ
ネットワーキングが始まり、その合間に、
数名の演者が発表するようなある種のパーティー形式で行われることが多いらしい。
また、「コワーキング・スペース」と呼ばれる独立した事業者同士が
会議室や事務所スペースを共有するようなスタイルが近年増えてきていて
起業家同士のネットワーキングの場となるケースも出てきているという。
ようやく日本でも注目され始めた昨今だが、
ニューヨークのコワーキングスペース提供事業は
50億ドルもの企業価値を持つまでに急成長していて、
はるか先を行っている感は否めない。
【イスラエル】
イノベーションの舞台としてはシリコンバレーが注目されがちで
もちろん重要な拠点であることは間違いないのだが、
意外にもイスラエルがネットワーキングに有利な「地理的な密度」や、
技術的バックグラウンド、国民性、国策としての制度など面で
とても期待値も実績も高まってきているらしい。
【近年の企業環境】
テクノロジーの発展により、
事業創造の為に地理的な格差や、
新規事業を開始するにあたり必要なコスト等が
年々縮小されてきていると言われている。
これは、株式会社の設立に必要な資本金の金額が下がった様な
本邦の制度変更だけでなく、
インターネットにより無店舗・無在庫でビジネスが始められ、
PayPalの様なクレジットカード活用した簡便な決済方法が登場た事も大きい。
また、クラウドファンディング等の新しい資金準備の手法も登場していて
3Dプリンターの登場により、試作品や小ロットでの製造コストを
大幅に圧縮出来る可能性が出てきいるなど、
新規事業を始める際のハードルが年々下がってきている。
【人的サポート】
上記の様な起業環境の変化とも関連し、
起業に必要な外部からのサポート・プログラムとしては、
これまでは中長期的に「施設」の提供等を中心に組立られてきた
「インキュベーション」から
短期間で事業を成長させるための資金調達や
人材育成(メンタリング)を中心に組み立てられた
「アクセラレーション」に期待が高まっている。
所が日本ではアクセラレーションプログラムの中でいうところの
起業家等の、スタートアップの担い手をメンタリングする
「メンター」人材が不足しているらしい。
メンタリング自体が、概念としても制度としても浸透していないせいもあり、
起業家もメンタリングを積極的に利用するよりも独力での現状打開に固執する
そんな傾向が有るのかもしれない。
さて、テクノロジーの恩恵は受けつつも
今ひとつ起業環境も必要なサポートもやや不足している感が否めない日本だが、
そんな本邦で、イノベーションに繋がるようなスタートアップを成功させるには、
何が必要なのだろうか?
起業家もメンターの不足している状況を見ていくと
行き着く所は「一歩踏み出す」事への不安が有る気がする。
それによって、
起業家が増えない
→企業による成功者も増えない
→起業家をメンタリングする事ができるメンターも増えない
→起業環境が良くならない
という状況が起こっているのと感じている。
そして、起業環境の改善なくして、
起業家の増加は難しいのかも知れない。
まさに、鶏が先か、卵が先か。
この中で、今後更に起業家を増やすには、
メンターの重要性はもちろん、
メンタリングを受ける主体である起業家候補として
一人ひりが一歩を踏み出す姿勢がキーとなる筈だ。
それには、「一歩踏み出す」事を賞賛する風土がまず必要であって
これもまた「鶏が先か卵が先か」という話にもなるが、
一歩踏み出して、新しい行動を始める人が増えることが、
この風土を醸成するのに必要な事なんだと思う。
イノベーションの担い手として、
ベンチャー起業家が有望だとすると、
一人ひとりの「新しい行動」が、
社会にイノベーションという新しい価値を生み出すことに繋がるのだろう。

一人ひとりが、新しい行動を始めるきっかけは、
人と人との出会い、特に、既存の組織では埋もれてしまいがちな
イノベーター、及びその候補となりうるような人同士が
気兼ねなく交流できるような場作りが重要と考えている。

私が読書会等を主催しているのも
その様な場の一つになればという思いが根底にあるのだが、
先に述べたアメリカ型のコワーキング事業ではなく
草の根運動的に場作りが行われていく「読書会」というスタイルは、
いかにも日本的な様にも感じられていて、興味が尽きない。
★行動へのヒント
・小さな一歩がイノベーションへと通じる
・イノベーターが生まれやすい土壌を作ることもイノベーティブな行動
最後までお読み頂きありがとうございました。
宮木俊明